段取りという言葉そのものは、歌舞伎の世界で生まれたといわれています。お芝居では、幕で区切られる一段落を「段」と言い、お芝居は何段で構成し、どこで区切るかを検討することが大切であり、その良し悪しがお芝居の出来を大きく左右すると言われていました。そのため、「この芝居は段取りが良くて観ていておもしろかった」などという言葉になった様です。

建築の世界では建築工事がうまく進むように、事前に準備を整えておくという意味で「段取り」という言葉が使われます。

さて、表題の「段取り8分」という言葉ですが、建築工事を取仕切る者の仕事の良し悪しは8割がた、段取り(準備)で決まってしまうという意味です。中には仕事の8割は準備作業だという意味で使う人もいますが、いずれにしても準備が大切ということです。

では、上手な段取り方法は、どのように身につけていくのでしょうか。

私の知り合いの大工の棟梁の話をしましょう。
木造住宅の工事の中で、大工さんが最も輝いて見えるのは上棟式の日です。上棟式とは、今まで大工さんの作業場でばらばらに加工された材料を、朝から一日で組み上げる作業です。

上棟写真:さまざまな木材が組みあがっていますね


それまでの作業は、ほとんど一人で行う作業ですが、その日だけは、弟子、兄弟子、師匠まで呼んで、力を合わせて組み上げる作業になり、そこまで一人でコツコツと行ってきた木を加工する作業の出来不出来が白昼にさらされる日でもあります。
大工さんにとって、その日にノコギリやノミを持って走り回ることはとても恥ずかしいことで、ましてやひとつでも部品が合わないなどということが起こったり、組み立て手順の指示を間違ったりということが起こったりすれば、弟子達の信頼は薄れ、兄弟子や師匠からは大きな罵声が飛んできます。

その大工さんも20年以上の経験がある大工さんですが、今でも上棟式は心配なので前夜は眠れず、加工場に行って、組み立ての手順を何回もイメージしたり、難所の組み手(木と木がつながる部分)を地面の上で試し組み(これを地組と言います)したりすると言っていました。これこそ正に、究極の段取りですね。


大工さんの世界では、こうした段取り方法や、技能について、師匠は弟子に、あまり手取り足とり教えてはくれません。だから、弟子たちはほとんどの場合、師匠の所作(しょさ=立ち居振る舞い)を見ながら覚えていきます。
基本的に大工さんが弟子の面倒をみる時とは、「このままだと危険だからと、口より先に蹴りが出る(言葉で言うより蹴るほうが早い)」時位です。
まあ、大工の棟梁が、自分の技能や経験を分析して、順番に秩序だて教えるほど科学的だったら私たちがイメージしている大工さんと違いすぎて、魅力がありませんよね(全国の大工さんごめんなさい。私の感性が古いかもですが・・・・)

さて、私たちの学科「建築監督科」は、「段取り」を科学的に分析して「具体的に、わかり易く、秩序だて」教える日本で初めての学科です。

最初にお話ししたように、段取りは今やすべての業種の、すべての場面で必要になります。本科で学んだ皆さんの活躍の場は無限にあるといえます。