建築物は土地があって建てるもの。これは常識ですよね?
設計の仕事をしていると、色々な土地に出会うものです。今まで設計してきた建物の敷地も千差万別です。
今日お話しする土地は、敷地のど真ん中を横断するように「区界(くざかい)」がある土地の話です。
土地には何の責任も無く、「なんで俺の真ん中でしきったんだよ」位の感じだと思いますが、いざ建物を建てるとなると普段味わえない醍醐味が味わえます。

まず、敷地には区の指定した「用途地域」という、どのような用途(住宅とか事務所など)の建築物をどのくらいの規模で作ることが可能かをしめしたルールがあります。
ひとつの敷地に複数の用途地域がからんでくることは良くある事で、要は、敷地のどの部分にそのラインが通っているか調べるのが厄介なだけです。しかし、それさえはっきりしてしまえば、後は建築基準法の定めに応じて設計を進めれば良いわけで、あとは、日常の業務としてこなすだけです。

この敷地も区が違うことで、用途地域の違いがありましたが、通常の作業で設計を進めることになりました。

さて、暫く設計を進めるうちに、大きな問題に当たりました。

土地・建物に関わる税金は、東京都では「都税」として徴収されますので良いのですが、問題は住民税です。
住民税は、住所地の市区町村にも配分があります。従って、新しい建物を建てたときの住所で支払先が異なります。一般に「住所」は、門と玄関の位置で決まります。
良くある事ですが、家を建替えると住所が変わってしまったという例もあります。

さて、この設計では、玄関の位置が変更になり、門はT区、玄関はB区の範囲に属することになります。勿論あえて「いじわる」な設計をしたわけではなく、綿密なるお客さんとの打ち合わせの中で決まった事です。

敷地の概要

そこで暗礁に乗り上げた事は、建築を建てる前に役所に届出をする「建築確認申請」をどちらの区に提出するかでした。(建築確認申請は、土地の属する区役所に提出します)
区にとっては、自分の区の住民になれば住民税などの税収が入ることになりますからどちらに聞いても「本気」です。
区同士が話し合って、最終的には結論が出ましたが、約2ヶ月が過ぎていきました。

この例では区の境と言うことで問題はある程度絞られましたが、これが県境だったらと思うと「ぞ〜〜」とします。県境には川などがあって、このような事態にならないようにうまく仕切られているせいか、今までにこうした案件にはお目にかかっていません。

さて、このお施主さんはどちらの住民になったと思いますか?
区同士の話し合いの結果、元々T区の住民であったことを配慮してT区の住民に落ち着きました。