昔、酔っ払ったサラリーマンが帰宅して、隣の家の玄関先で「オレだ!帰ったぞ」と騒いで問題になった。なんてことがあります。(あっ!これ私ではありません)

以前は、分譲住宅といえば同じ形、同じ色の住宅が並んでいたものです。特に新興住宅地では多かったと記憶しています。

何故同じ形の家が建ち並んだかといえば理由は簡単です。
土地を分譲する時に、同じような形状の、同じような大きさの土地になっていたことがそもそもの原因です。

分譲地はこんな感じです

そうなると、建設会社は、土地の形が同じだと言う理由で、同じ図面を使いまわすことになります。
設計料が安くなることや、同じ部品を大量に購入することでコスト的なメリットが大きかったのです。

またまた話は横道から始まりましたが、私もこんな新興住宅地には苦い思い出があります。


ある日、お施主さんの車に乗せられて、建築地の視察に行きました。
新興住宅地のある場所に車を止めて、「ここが私の土地です」。
廻りを見晴らしたところ、まだ数件の住宅がまばらに見えるだけで、これから建築ラッシュが始まるのだな・・という印象を受けました。

お施主さんに紹介された敷地は、南北に少し長いものの、平坦で、長方形をした設計しやすい土地でした。
北側に1件まだ築数年だろうと思える住宅が一軒建っていました。

それから半年後。建築確認申請を済ませ、工事の契約も済ませ、待望の着工日となりました。
※建築確認申請とは設計した建物が建築基準法などの法律を守って設計されていることを第三者に確認してもらう制度

建築界では、工事の幾つかの段階で、縁起をかついで、儀式が行われますが、一般に着工時には、地鎮祭(じちんさい)と呼ばれる儀式が挙行されます。



4本の竹を地面に立てて、しめ縄をはり、正方形の「降臨の場(神様が降りてくる場所)」を作ります。そこに神主さんを呼んで祝詞(のりと)を挙げてもらい、工事中も完成後も、「地の神」に暴れないようにお願いをする儀式です。簡単に言えば、工事の安全と一家繁栄を祈願する儀式ですね。

いざ、祝詞をあげんとした瞬間です。
北側のお宅のご主人が、「こら〜!人の敷地で何してる!」と怒鳴り込んできたのです。


晴天の霹靂(せいてんのへきれき)とはまさにこんな状態を言うのだろうと思いました。頭が真っ白になりながら、「何かありましたか」と、とぼけた返答をするのがやっとでした。

後日談と言うことでお話をしますが、実はその土地は、北側の住宅の方が南北続きで買われた土地で、私のお施主さんの土地ではなかったのです。

お施主さんも、それを紹介した不動産屋さんも、そのことには何も気がついていなかったという強烈な結末でした。実は・・・そのお施主さんの土地はすぐお隣でした(笑)

最初の話に戻りますが、土地の形状がほぼ同じでしたから、設計はほとんど変更無しですみましたが、建築確認申請もやり直しましたし、何よりも北側のお宅へのお詫びが大きな仕事となりました。
最後はそのご主人も笑ってくれて無事に終わりましたが、さぞかし慌てものの建築家だと思われたことだと思います。

設計を頼まれたら、その土地が誰のものかは、自分で確かめなければ駄目ですね。持ち主と言えども信用なら無いという教訓でした。