柔構造と剛構造について

最近「ブルジュ・ドバイ」と呼ばれる高さ世界一の超高層ビルがアラブ首長国連邦(UAE)のドバイで完成しました。
これまで世界一だった台湾の「台北101」(508メートル)を超えて、地上160階以上で800メートル以上の高さです。日本でも、現在建設中の「東京スカイツリー」(634メートル)は、東京タワー(333メートル)を大きく上回るそうです。

人は昔から高いものに憧れ、限りなくそびえたつ建造物を造ることが夢でした。かのフランク・ロイド・ライトも「マイル・タワー」という1000mを超える528階の高層建築を提案しています。そのスケッチを見るとドバイタワーにも似ていてライトの非凡な才能が感じられます。

世界中で超高層建築がさかんに建設されていますが、地震国日本においてそれらを実現させるためには、さまざまなハードルがありました。

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朝倉書店「建築デザインと構造計画」p16 図2.17より引用

柔構造と剛構造
建築構造の専門用語に「柔構造」と「剛構造」という用語があります。
広辞苑には「柔構造」とは「柱・梁などの材を小さくしたり、スパンを大きくしたりして、構造物の振動周期を長くし、構造物に作用する地震力を小さくしようとするもの。超高層建築などに効果的」という説明があります。要点をついたじつに平易な説明だと思います。
一方「剛構造」とは柔構造とは反対に「建物を、外力に対して変形などを防ぐために強固にした構造」のことです。
じつは地震国『日本』において、建築の骨組みを「柔構造」「剛構造」のどちらにする方が良いのかについて建築界において「柔剛論争」というものがありました。
これは建築構造の専門家でなくても、建築関係の人間は聞いたことがあるくらい有名な論争です。

「柔剛論争」とは昭和初期にかけて、『建築物は堅固に造るべしとする東京帝国大学の佐野利器博士やその門下生の武藤清博士らによる「剛構造」支持派と、建築物は柳のように柔らかく造るべしとする海軍省の真島健三郎技師との間で繰り広げられた論争』です。
当時は地震動が建築物にどのような影響を及ぼすかについて深く解明出来なかったので、決着はつきませんでしたが、どちらの技術もその後の建築界に多大な影響を与えました。

簡単にいうと鉄筋コンクリート構造のような堅固な構造形式は「剛構造」の部類、(中高層の)鉄骨構造のような比較的柔らかい(硬い鉄骨が柔らかい?というのはピンとこないかもしれませんが)構造形式は「柔構造」の部類に入ります。

日本で1968年に最初に建設された超高層建築物「霞ヶ関ビル」は、鉄骨構造の「柔構造」です。「霞ヶ関ビル」の構造設計者はじつは「剛構造」支持派の武藤清博士なのです。100メートル超えるような建築物を造るには柔構造の理論による鉄骨構造を採用する必要があったというわけです。
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さて「柔構造」の話になると必ず出てくるのが日本の古い寺社仏閣の「塔建築物」です。奈良時代に建てられた三重塔・五重塔が1000年以上の長期に亘って災害に対して耐えて持ちこたえられてきた事は奇跡に近いと思います。その間に大きなあの「関東大震災」「阪神大震災」に匹敵するあるいはそれ以上の地震を受けているはずです。
幸田露伴の『五重塔』では五重塔は「風に吹かれただけでも木の葉のようにゆれる・・・」とあります。それはこれらの塔の構造が独特の接合部分を持つ「柔構造」であるからであると言われてきました。まさに『やじろべい』のような積み上げ構造で部材同士が堅固に結合されていないため「建物のゆれ」によって地震の大きな力を吸収しているわけです。


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五重塔

伝統的な日本の木造建築の技術が実は最先端の建築技術につながっているのです。

建築への興味は限りなく続きます・・・・・・・